2008年08月02日

秘跡の有効性の条件について

今回は少々マニアックな話である。

pinpinkorori氏は当ブログコメント欄で以下のように述べている。
http://defencecatho.seesaa.net/article/102215744.html#comment

「叙階は違法であるが有効である。」
以上の理解ですと秘跡の次元では彼らは教会内部ですか?私は、1988.6.30の聖別の「瞬間」の破門通達の事実から(破門宣告7.1の前でした)有効でなくそのため
ex opere operato(秘跡の事効的効力)「なされた行為そのものによる効力」は、瞬間で不完全でありなされていないと解釈していました。
したがって破門された瞬間に ex opere operantis(人効的効力)「行為する人の人格によって効力がある」となって、lefebvreは破門者で人格がないから秘跡は無効であると20年以上理解してきました。lefebvre自身そう自覚して無効と思っていたと思います。いかがでしょう?。


Posted by pinpinkorori at 2008年07月08日 23:12

冒頭の6.30の「瞬間」の破門通達云々は、おそらくpinpinkorori氏が「自動破門」をよく理解していないための混乱であり、ここでは扱わない。
(詳しくは以下を参照。
「犯罪の前に刑罰が下るという怪奇」
http://defencecatho.seesaa.net/article/103978764.html
目を引くのはここでpinpinkorori氏が唐突に事効的効力という概念を持ち出していることで、よほど知っていることがうれしいのか、その後もこの語を何度か大した必然性もなしに持ち出している。しかし、正直言って、何のためにこの用語を持ち出しているのか、ぜんぜんぴんとこない。おそらく、使っている本人自身この用語の意味をあまり正確には理解してないのだろうと推察する。
「事効的効力」とは「行われた秘跡の儀式によって、秘跡は常に恩恵を与える」ということを意味する("Pocket Catholic Dictionary"'EX OPERE OPERATO'(Doubleday))。「秘跡の恩恵を決定するのは秘跡を授ける者や受ける者の徳ではない」(ibid.)。「真の意味で、秘跡は恩恵の道具因である」(ibid.)。それゆえ、「事効的効力」に関して問題となるのは秘跡が正しく行われたかどうかであって、その執行者が破門されたか否かではない
pinpikorori氏は上記コメントにおいて、破門された瞬間に「人効的効力」となった、と言っているがこれもまったく意味不明である。「lefebvreは破門者で人格がない」というのもひどい話で、破門されても人格を喪失するなどということはない。もし、本当に人格が失われるのならば、被破門者は罪を悔いる機会も奪われるし、かりに死刑にされても文句は言えないはずである。「第二バチカン公会議が懲罰を捨てた」と主張している当人にしては、あまりに厳しい厳罰主義である
「人効的効力」は、「事効的効力」と対になった概念であり、「主に秘跡を受領する者の善き性向(good disposition)に適用される」("Pocket Catholic Dictionary"'EX OPERE OPERANTIS'(Doubleday))。pinpinkorori氏は、破門によって「事効的効力」が「人効的効力」に転換するという、今まで誰も見たことも聞いたこともない摩訶不思議な理論を繰り出しているが、こんな教えはカトリック教会には存在しない。というのは、「事効的効力」と「人効的効力」は対概念ではあるが、必ずしも常に背反的なわけではないからだ。

よくある曲解や非難に対して、強調されねばならない教会の教えは、事効的な秘跡の効果を機械的ないし魔術的効果と解釈しては決してならないということである。人効的効力は排除されていない(The opus operantis is not excluded.)。反対に、成人の受領者の場合は明白に要求されることである。それにもかかわらず、受領者の主観的性向は恩恵の原因ではない。それは単に、恩恵が伝わる際の不可欠な条件に過ぎない。


Ludwig Ott"Fundamentals of Catholic Dogma"TAN,1955,p330

つまり、事効的効力なしには有効な秘跡は成立しないが、その際人効的効力がぜんぜん無関係であるということでもないのである。
20年もの間本人以外にはまったく意味不明の考えpinpinkorori氏はよくも抱き続けたものであると感心する。

さて、秘跡が有効であるためには質料(matter)、形相(form)、意向(intention)の三つの条件が必要である。

すべての秘跡は三つの要素によって完成する。質料としての物。形相としての言葉。教会が行うことを行うという意向を持って秘跡を授ける人。これらの要素の一つでも欠ければ、秘跡は効力を持たない。


Exsultae Deo(アルメニア人合同の大勅書)(DS 1312)

叙階の秘跡で言えば、質料は司教による「按手」であり、形相は叙階の際の秘跡書に従った言葉である。
三要素の内、残りの意向は少々理解しがたく、拡大解釈をする者が多々見られる。「異端者や離教者の叙階は、彼らが教会の信仰に逆らっているがゆえに、教会の意向に反している、だから無効である」と誤謬推論する人があとを絶たない。
詳しい説明は専門家にまかせるが、まず理解しておくべきことは、「質料」と「形相」が揃っていれば、通常「意向」もあると仮定されるということである。

意向は本来内的なものであって、教会はそれについて判断をくださないが、それが外部に現れる時、それを判断しなければならない。秘跡を挙行し、これを授ける場合、正当な質料と形相とを慎重に正しく使用することによって、教会が行うことを行おうという意向があると考えられる。この原則から、異端者あるいは非受洗者によって授けられた場合でも、カトリック教会の儀式によって授けられたものであれば、真の秘跡であるという教理がある。


Apostolicae curae et caritatis(英国国教会の叙階の無効性)(DS 3318)

これで分かる通り、秘跡執行者の思想が何であるかは、秘跡の有効性に必要とされる「意向」には直接は関係がない(お分かりの通り、人効的効力で言うところの「主観的性向」(subjective disposition)とも混同できない)。
これは極端な例を見てみれば理解できる。例えば、洗礼において授与者が、洗礼は霊魂に何の効果も与えないと表明した場合(メソジスト派)でも、その洗礼は有効である(DS 3100-3102)。

トレント公会議は、規定第11条全体で、秘跡の目的を述べてもいないし、秘跡授与者は教会が意図することを意向せねばならないとも言わないで、ただ、教会が行うことを行えと言っているのである。さらに、教会が行うこととは、目的ではなく、行為を意味しているのである。……このことから、イノケンチウス4世が『洗礼について』の第2章、第9項で述べているように、浸水によって人を濡らすだけであると信じているが、洗礼を授けるほかの人々が行う通りに自分も行うという意向をもっているサラセン人によって授けられた洗礼は有効である」。


中部太平洋代表教区長にあてた検邪聖省の解答(DS 3102)

それゆえ、ルフェーブルが教皇に従わなかったという事実は、たしかに違法であり、離教行為だが、そのことは秘跡の有効性に必要な「意向」の要素を喪失させない。ルフェーブルは有効な叙階の秘跡に関して、教会が行うことを行っているからである。
ルフェーブルは有効に叙階された司教であり(もちろん破門によってもその叙階は無効にならない)、教会の秘跡書に従って行ったから、質料も形相も意向も揃っている。従って、ルフェーブルによる司教聖別は、正しく儀式が行われたがゆえに、まさしく「事効的に」有効なのである。

(註・DSはデンツィンガー・シェーンメッツァー資料集の略称。カトリック教会の信経および信仰と道徳に関する重要な文章を収録している。エンデルレ書店から邦訳されている。)

(文責・金田一輝)



posted by kanedaitsuki at 23:00| Comment(11) | TrackBack(0) | 神学・教義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かにマニアックな内容ですが分かりやすかったです。勉強になりました。

恐らく以下のサイトの記述を自己流にアレンジ(曲解)しちゃったのでしょうね。

ttp://sakaba.cocolog-nifty.com/cocoro/2008/05/post_d16e.html
 
「洗礼は、
カトリック教会は、未信者でも授けることができます。
それは、行為をなした人の資格や人格や人柄ではなく
「なされた行為そのものだけが問われる」秘跡の事効的効力ex opere operatoからです。

プロテスタントはそれに対して信仰のないものや人格のないものがしたら無効です。
「ほんとうに信じる」という心の内面が問われるからです。
これを人効的効力ex opera operantisといいます」
Posted by メロン at 2008年08月03日 01:19
メロンさん、コメントありがとうございます。

>確かにマニアックな内容ですが分かりやすかったです。勉強になりました。

そうですか。良かったです。こんなん誰も読まんだろうなー、と思いながら書いてました。

ご紹介の文章を読んで気づきましたが、「人格がない」云々がずっと理解できなかったんですが、あるいはじゅうぶんな理性を働かすことのできない幼児などを指しているのかも知れませんね。そうとしても、破門によって、いい大人であるルフェーブルの人格がなくなるなんてことはありえませんが(狂気に陥ったなら別です)。
Posted by kanedaitsuki at 2008年08月03日 08:02
横槍失礼。
私も「人格がない」云々は、司教としての権利能力、つまり「法人」における「法人格」のようなものを想定しているのかと思っていましたが、ただのコピペだったのですね。
それより、該当記事のコメント欄で、「死後、24時間以内ならば」「洗礼を」「さずけることができ」、マザーテレサも実践していたかのような主張している人がいたのには驚きました。
初耳だったもので。
Posted by RIMIX at 2008年08月04日 01:08
RIMIXさん、コメントありがとうございます。

>私も「人格がない」云々は、司教としての権利能力、つまり「法人」における「法人格」のようなものを想定しているのかと思っていましたが、

「法人格」とするのは一つの説としてありそうです。しかし、その場合は「権能の喪失」とはっきり明言すべきで、読む側は混乱してしまいますね。
Posted by kanedaitsuki at 2008年08月04日 09:05
ところでpinpinkorori氏は、

>ルフェーブル自身も司教叙階を有効とは思わなかった

とも繰り替えし主張しているのですが、当のルフェーブル自身は司教聖別直後の講話で、

http://www.sspxasia.com/Documents/Archbishop-Lefebvre/Episcopal-Consecration.htm
>all penalties of which we are the object, are null, absolutely null and void,
(我々に成されたすべての刑罰は、まったく無効である)

とはっきり述べてます。教会による破門も聖職停止もちっとも認めてない。これは現在の聖ピオ十世会の基本的スタンスでもあります。彼らはずっと自分たちの立場は「違法」ではないというキャンペーンを張ってます。叙階が無効だったなどと思っているわけないでしょうに。
pinpinkorori氏はどこからこんなとんでもないデマゴギーを聞いたんでしょうかね。あるいはお得意の聞きかじりの自分勝手理解ということなんでしょうか。

Posted by kanedaitsuki at 2008年08月04日 11:54
ピオ会側に、自分たちの司教聖別は「無効」という自覚がない事は、破門後にも司教聖別を行っていたという事実を見ても明らかですね。
以上、横槍失礼しました。
Posted by RIMIX at 2008年08月04日 13:46
 RIMIX 様

 ピ会はル大司教破門後に、「司教聖別」は一度もおこなっていないのでは・・・?
Posted by クマ at 2008年08月04日 20:50
クマさんへ。

http://defencecatho.seesaa.net/article/82973122.html

この記事によると、

“マジェールが世を去った時、聖ピオ十世会は、マジェールの司祭の一人を違法に司教聖別した。それゆえ、ライオネル・ランジェル師はルフェーブル系の五人目の違法の司教となった。”

とありますから、ピオ会は破門後も司教聖別を行っていたことになりますね。
Posted by RIMIX at 2008年08月04日 21:38
 そんな例があったのですか・・・!
 どの「司教」が、ライオネル・ランジェル師を「司教聖別」したのでしょうね?
Posted by クマ at 2008年08月04日 22:20
クマさん、

>どの「司教」が、ライオネル・ランジェル師を「司教聖別」したのでしょうね?

カトリックヒエラルキーリストを見ても、ランジェル師が誰に司教聖別されたかについては記載がありません。
http://www.catholic-hierarchy.org/bishop/brangel.html

聖ピオ十世会側に記録があるでしょうから、ピオ会が教会と和解すれば、使徒継承鎖は復元されるでしょう。
今の時点で誰にされたかなどは知る必要のないことです。何か意味あるんでしょうか?
Posted by kanedaitsuki at 2008年08月05日 08:41
 深い意味は全くありません。
 ル大司教の逝去直後のようですね。「誰が、どこで・・?」と頭をかすめただけです。

Posted by クマ at 2008年08月05日 10:21
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/104063550
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。