2007年11月15日

Jean-Pierre Torrell "Aquinas's Summa: Background, Structure, & Reception"

ジャン=ピエール・トレィユ『アクィナスの「神学大全」 その背景、構造、受容』。裏表紙より。



この簡明な新作において、聖トマス・アクィナスの伝記で評価の高い著者、ジャン=ピエール・トレィユはその専門的知識をもってアクィナスの「神学大全」にとりくんだ。その内容、歴史的、文献的、教義的背景、そして永続的な意義について書かれたこの本は、アクィナスの代表作への短くて大衆向きの入門書として、読者が繰り返し参照するものになるだろう。
トレィユはアクィナスの人生の専門的な解説から入り、それから「神学大全」の全体構成と個々の内容へと移る。彼は「神学大全」の文献的・教義的文脈を考慮し、天使的博士の文書全体の中にその仕事を据え、アクィナスの使ったキリスト教、ギリシャ、ユダヤ教、アラブの典拠史料を調査している。
本の後半は、1274年のアクィナスの死から二十世紀までの、「神学大全」の受容の歴史を概観する。トレィユはアクィナスの「神学大全」の運命を、そのゆっくりとした出発から、最終的なトミズムの興隆を経て、その広範な受容に至るまでを追跡している。十九世紀と二十世紀は、回勅「アエテルニス・パトリス」によるアクィナスの仕事の究極的勝利の時代であり、第二バチカン公会議ののち、その内容と方法に新たな関心が集まっている。
この本は簡潔にして完結している傑作である。「神学大全」の内容、方法、影響を理解し評価したいと思っている読者たちにとって、大変興味深いものとなるだろう。

ジャン=ピエール・トレィユはトゥルーズ県のドミニコ会の司祭であり、フライブル大学の教義神学の教授である。彼はCUA出版による、高い評価を受けている「聖トマス・アクィナス」シリーズの編集者である。



非常に薄い本(156ページ)であるが、重要な情報の詰まった凝縮された一冊。さすがプロの仕事だ。
肝心の「神学大全」の内容解説は、50ページにも満たないが、簡にして要を得ており、比較的新しい知見にもことかかず、アンチョコとして使える。下手な「入門書」に手を出すくらいなら、この本を熟読した方がよい。
また、常に神学大全の全体構造から細部を読み解いており、第三部にかかわる「キリストの生の奥義」についての解説などに特徴的に表れている。トレィユによれば、アクィナスは「イエスの人生」を、キリスト論的統合の中で扱った最初にして唯一の中世神学者ということになる。私は、父なる神との関係性に裏打ちされた「人間イエス」について叙述した、教皇ベネディクト16世の近刊『ナザレのイエス』(ダブルデイ)を想起しながら読んだ。
その他、アクィナスの小伝記、「神学大全」の文献的・教義的環境や、受容の歴史についても至れり尽くせりだが、終章の2005年までの最新のアクィナス研究についての書誌紹介が非常にありがたい。志あるひとにとって、さらに深く研究するための土台を提供している。
「神学大全」についてまず一冊という場合、文句なくこの本をすすめられる。体裁は「入門書」だが、「入門書」の格ではない。

(文責・金田一輝)




posted by kanedaitsuki at 09:54| Comment(0) | TrackBack(0) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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